道路脇のガードレールを正面から見ると、白い板は平らではなく、横に長い二つの山を描いています。厚い壁なら頑丈そうですが、使われているのは数ミリほどの鋼板です。なぜ、わざわざ波形にしているのでしょうか。
波形には、薄い板に奥行きを与え、曲がりにくさと粘り強く変形する余地を両立させる役割があります。ただ硬くして跳ね返すのではなく、支柱と一緒にたわみながら衝撃を受け止め、車を道路側へ導くための形です。
平らな板を曲げると「断面の深さ」が生まれる
紙を一枚だけ横に持つと、すぐに垂れ下がります。ところが、同じ紙を山折りと谷折りにすると、同じ向きの力に対して形を保ちやすくなります。材料を増やしたのではなく、断面に高さができ、曲げられるときに材料の内側と外側が離れたためです。
ガードレールの白い板は「ビーム」と呼ばれます。鋼板を波形に成形すると、平らなままより断面の奥行きが大きくなり、道路に沿う長い板として必要な剛性を持たせられます。剛性とは、力を受けたときの変形しにくさのことです。
板が曲がるとき、曲がりの外側は引っ張られ、内側は押し縮められます。波形にして両側の距離を広げると、同じ厚さの鋼板でも曲げに抵抗しやすくなります。厚い鋼の塊にするのではなく、薄い板を必要な方向へ折り曲げることで、重さをむやみに増やさずに断面の働きを大きくしているのです。
ただし、硬ければ硬いほどよいわけではありません。まったくたわまない壁へ車がぶつかれば、短い時間に大きな力が車体と乗員へ返ります。反対に柔らかすぎれば、車が道路の外へ出るのを止められません。波形のビームには、形を保つ剛性と、壊れずに変形を続けるじん性の両方が求められています。
衝撃は一枚の板だけで止めているのではない
車が接触すると、まずビームが押されて道路の外側へたわみます。その力は、ビームを留めるボルトやブラケットを通り、間隔を空けて立つ複数の支柱へ伝わります。一本の支柱だけで急に受け止めるのではなく、横につながったビームが力を周囲へ渡していく構造です。

このとき、ビームと支柱が変形する過程で衝突のエネルギーの一部を受け持ちます。力がかかる時間と範囲を広げることで、一点へ集中する負担を小さくするのです。ガードレールは車をその場で完全に固定する設備ではありません。車の進む向きを大きく乱さず、路外への飛び出しを防ぎながら、道路側へ案内することが役目です。
波の山は、見た目の飾りではなく、この力の受け渡しをするビームの断面です。一般的な二山型に加え、より高い強度へ対応する三山型もあり、道路条件に応じてビームの形や厚さ、支柱の間隔が組み合わされます。
へこみや曲がりは、力を受けた跡でもある
接触事故のあと、ビームがへこみ、支柱が傾いていることがあります。それは単なる見栄えの悪化ではなく、部材が力を受けて変形した跡です。変形によって衝撃を受け持った部材は、本来の性能を失っている可能性があるため、損傷した部分は交換の対象になります。
道路から安全に見られる場所なら、ガードレールを斜めから眺めると波の奥行きが分かります。さらに、板の継ぎ目ではビーム同士が重ねられ、ボルトでつながっています。一本の長大な板ではなく、交換できる長さのビームを連結し、支柱と組み合わせて道路沿いに続けているのです。
ガードレールの白い波は、薄い鋼板をただ頑丈に見せるための形ではありません。衝撃を一か所で止めず、たわみながら隣の支柱へ渡していくための、力の通り道になっています。


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