宅配便の箱を切り口から見ると、平らな紙の間に波形の紙が挟まっています。薄い紙を三枚重ねるだけなら、もっと平らで作りやすそうです。それでも中央をわざわざ波打たせるのは、少ない材料で厚みをつくり、曲げ、押しつぶし、衝撃に耐える構造へ変えるためです。
この波形の紙は「中芯」、外側の平らな紙は「ライナ」と呼ばれます。一般的な段ボールは、表裏二枚のライナと一枚の中芯を接着したもの。中芯は箱の内側に隠れていますが、二枚のライナを離れた位置に保ち、力を多数の山へ振り分ける骨組みになっています。
平らな紙を重ねるだけでは厚みを生かせない
一枚の紙を両端で持つと、自分の重さだけでもたわみます。何枚か重ねれば多少は丈夫になりますが、互いに自由にずれる状態では、それぞれが別々に曲がってしまいます。枚数に応じて重くなるわりに、板らしい硬さは得にくいのです。
段ボールは、材料を中央へ集めず、上下へ分けて配置します。上のライナと下のライナの間に中芯が入り、一定の間隔を保つため、全体には数ミリの厚みができます。板を曲げると、外側の面は引っ張られ、内側の面は縮もうとします。この二つの面が離れているほど変形しにくくなるため、同じ紙をただ重ねるより、軽いまま大きな曲げにくさを得られます。
中芯の役目は、隙間を埋めることではありません。上下のライナが近づいたり、横へずれたりしないようにつなぐことです。建物の床や扉にも、薄い表面材の間を軽い芯材で支える構造があります。段ボールも、紙でできた小さなサンドイッチ構造だと考えると分かりやすくなります。
波の山が連続する支柱になる
では、中芯が平らな板ではなく波形なのはなぜでしょう。波を横から見ると、上のライナと下のライナを交互につなぐ斜めの壁が連続しています。上から力を受けたとき、一つの広い空洞で支えるのではなく、隣り合う山へ力を分けられる形です。
中芯の山の頂点は、でんぷんを主原料とする接着剤でライナに固定されています。ここが離れていれば、中芯は倒れ、ライナも簡単にたわみます。頂点が何列も接着されることで、ライナと中芯が一枚の板として働きます。三角形や連続したアーチに近い小さな空間が並び、紙が折れ曲がる方向を細かく制限しているのです。

箱を積み重ねたときは、側面が柱になります。中芯の波が延びる向きを「段の方向」といい、通常の箱ではこの方向が上下になるよう設計されます。切り口から見える穴も上下へ通るため、中芯とライナの端が荷重を受ける細い柱の集まりになります。段の方向を横にすると、この支え方が変わり、積み重ねに対する強さを生かしにくくなります。
ただし、波形ならどの向きの力にも同じ強さを持つわけではありません。段に沿う向きと、それを横切る向きでは曲がり方が違います。また、湿気を吸えば紙の繊維も接着部も弱くなります。箱の強さは、中芯の形だけでなく、紙の材質、接着、箱の寸法、折り目、保管環境まで含めて決まります。
押されたときは、つぶれることで中身を守る
段ボールの波は、硬さだけでなく緩衝性もつくります。箱の面に物がぶつかると、まず外側のライナが力を受け、その下の中芯が少し変形します。波の斜面がたわみ、強い力では山がつぶれるため、衝撃が加わる時間がわずかに長くなります。短時間に集中する力を変形へ使い、中の商品へ伝わる衝撃を和らげるのです。
この働きには限度があります。一度大きく押しつぶされた中芯は元の高さへ完全には戻らず、ライナ同士の間隔も狭くなります。角がへこんだ箱や、上面が踏まれた箱の強さが落ちるのは、目に見える傷だけでなく、内部の支柱が倒れているからです。
波の間にある空気層は、外気の温度変化が中へ伝わるのを遅らせる働きもします。ただし、段ボール箱は密閉された断熱容器ではなく、継ぎ目や開口部もあります。保冷箱の代わりになるというより、波形が生んだ空間に付随する性質と見るのが適切です。
中芯は二本のロールで波形にされる
中芯は、初めから波形の紙として作られるわけではありません。ロール状の平らな原紙を、歯車のような凹凸を持つ二本の「段ロール」の間へ通し、熱と圧力を加えて連続した波を形づくります。
次に波の頂点へ接着剤を塗り、まず一枚のライナを貼ります。この段階は、片側に波が見える「片面段ボール」です。反対側の頂点にも接着剤を付け、もう一枚のライナと重ねて加熱・乾燥させると、よく見る三層の段ボールシートになります。一連の設備はコルゲータと呼ばれ、紙を流しながら成形と接着を続けます。
接着剤を面全体へ塗らず、山の頂点を中心に付けるのも構造に合った方法です。接合に必要な場所を押さえながら、中の空間を残せます。できたシートは所定の幅と長さに切られ、折り目や溝、印刷を加えて箱へ加工されます。
波が高いほど強い、とは限らない
中芯の波は「フルート」または「段」と呼ばれ、高さと細かさには種類があります。代表的なAフルートは段の高さが約4.5〜4.8ミリで、30センチに34前後の山があります。Bフルートは約2.5〜2.8ミリと低く、同じ長さに50前後の山が並びます。さらに薄いEフルートは約1.1ミリで、個装箱などにも使われます。実際の段ボールの厚さには、ここへライナの厚さが加わります。
高い波は厚い空間をつくり、衝撃を受け止めやすくなります。一方、低く細かな波は山の数が多く、面を押す力に耐えやすいうえ、表面の凹凸が小さいので印刷や折り加工にも向きます。重い物なら厚い段、見栄えが必要なら細かな段、と単純に分かれるわけではなく、輸送中に受ける力や箱の使い方に合わせて選ばれます。二種類の波を重ねた段ボールが使われることもあります。
中芯を波形にすると、平らにしたときより長い紙が必要です。たとえばAフルートでは、完成幅に対しておよそ1.6倍の長さの中芯原紙を使います。それでも内部を紙でびっしり満たすよりはるかに軽く、必要な場所にだけ材料を置けます。段ボールの波は飾りではなく、空間そのものを部材として利用する形です。箱を支えているのは紙の量だけではなく、紙をどこに置き、どこを空けるかという設計なのです。


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