普段何気なく飲んでいるビールやジュースのアルミ缶。飲み終わったあと、側面のツルツルした部分を指でぐるりと一周なぞってみてください。
どこにも「板を丸めてつないだ線(継ぎ目)」が見当たりませんよね?よく見ると、底のパーツをくっつけたような跡もなく、はっきりとした継ぎ目があるのはフタの部分だけです。ペラペラの平らな金属板から、いったいどうやってあんなに深くて継ぎ目のない筒を作っているのでしょうか。
実は多くの飲料用アルミ缶は、板をくるっと丸めて筒にしているのではありません。たった一枚の丸い板をギュッと押し込み、壁を薄く引き延ばすというダイナミックな方法で作られています。底と胴体が一度も切り離されずに形を変えるからこそ、どこにも継ぎ目ができないのです。
まず円板を、浅いカップに絞る
缶の誕生は、トイレットペーパーのようにぐるぐると巻かれた巨大なアルミの板から始まります。
まず、板に滑りをよくする液を塗り、丸い「円板」の形に打ち抜きます。それと同時に、金型の穴へ向かって中央をギュッと押し込みます。すると、平らだった円板の中央が下がり、周囲が立ち上がって「底の浅いカップ」ができあがります。この加工を「絞り」と呼びます。
平らな紙を無理やりコップの形に押し込もうとすると、フチがクシャクシャにシワ寄ってしまいますよね。金属も同じで、一気に深い筒にしようとするとフチが波打ったり破れたりしてしまいます。そのため、最初はあえて浅いカップの形にとどめておくのです。

まだずんぐりむっくりしていますが、この時点でカップの「底」と「壁」は同じ一枚の板の続きです。継ぎ目のないツルツルの胴体になる条件は、この最初の一押しですでに整っています。
側壁だけを、リングで薄く長くする
続いて、浅いカップは「ボディメーカー」と呼ばれる機械へ送られます。ここでカップの内側に棒状の金属(パンチ)を突っ込み、パンチごと、内径が少しずつ狭くなっているドーナツ状のリング(しごきリング)へ力強く押し通します。
リングの隙間は、通り抜けようとするカップの壁よりもわずかに狭く作られています。そこを無理やり通ることで、壁の余分な厚みが削られるように移動し、薄くなる代わりに「長さ」へと引き延ばされていくのです。何段かのリングを連続で通り抜けるうちに、浅かったカップは私たちがよく知る細くて背の高い缶へと成長します。
この一連の作り方は、絞り(Draw)としごき(Ironing)を合わせて「DI成形」と呼ばれています。
無理に引っ張って伸ばしているわけではありません。内側からパンチが支え、外側からリングが隙間を絞り、その間をすり抜ける金属の厚みをコントロールしています。一度に薄くすると破れてしまうため、潤滑剤で滑らせながら何段階にも分けて、丁寧に壁を伸ばしていくのがポイントです。
ちなみに、パンチの先端に当たっている「底」の部分は、狭い隙間を通らないため厚いまま残ります。壁は限界まで薄く軽くして、底には形を支えるだけの頑丈な厚みを残す。なんとも理にかなった仕組みですよね。最後に底を内側へドーム状にへこませて、缶胴の基本形が完成します。
延ばしたふちを切りそろえ、ふたを付ける
力強くしごいて引き延ばした直後は、缶の上端がギザギザで揃っていません。材料が伸びる量にわずかな差が出るためです。そこで、はみ出た余分な部分をスパッと切り落とし、すべての缶を同じ高さにキレイに揃えます。
その後、潤滑剤を洗い流し、外側には商品名の印刷を、内側には飲み物の味を守るためのコーティング塗装を施します。最後に上端の口を少しだけ細くすぼめ(ネック加工)、別で作っておいたフタを巻き締めてフタをすれば、ようやく密閉された缶の完成です。
缶の上のほうが少し細くなっているのは、デザインのためだけではありません。「胴体は太くしてたっぷり飲み物を入れつつ、フタは小さくして材料を節約する」という工夫の跡なのです。
胴体から底までを「1つの部品」、フタを「もう1つの部品」として作るため、アルミ缶は「2ピース缶」と呼ばれます。飲み終えた缶に継ぎ目がないのは、つないだ線を上手に隠しているからではありません。一枚の平らな板を限界まで薄く、長く引き延ばした「金属の頑張りの結晶」があの滑らかなボディなのです。
まとめ:アルミ缶に継ぎ目がない理由
- 一枚の板を「絞る」:丸いアルミ板を押し込んで浅いカップ状にするため、底と壁が最初から一体になっています。
- 壁を「しごく」:カップを狭いリングに押し通し、側面の厚みを薄くしながら縦に長く引き延ばします(DI成形)。
- 底は厚く、壁は薄く:底の部分はリングを通らないため、頑丈な厚みを保ったまま壁だけがペラペラに伸びます。
- 2つのパーツでできている:「継ぎ目のない筒(胴体+底)」に「フタ」をかぶせるだけのシンプルな構造(2ピース缶)です。


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