ペットボトルを持ち上げて底を見ると、中央がへこみ、その周囲がいくつもの足のように盛り上がっているものがあります。とりわけ炭酸飲料のボトルは、花びらを並べたような形です。
このデコボコの大きな役目は、ボトルの内側からかかる圧力で底が変形するのを防ぎながら、容器をまっすぐ立たせることです。ただし、すべてのペットボトルが同じ底を持つわけではありません。炭酸の有無、飲料を詰める温度、冷却後に生じる力などに合わせ、底の形は作り分けられています。
炭酸の力は底にも逃げ場なくかかる
炭酸飲料には、二酸化炭素が圧力をかけた状態で溶け込んでいます。ふたを閉めたボトルの中では、その圧力が側面だけでなく、肩、ふた、底にも内側からかかります。力の向きは一方向ではなく、容器をあらゆる方向へ押し広げようとします。
円筒形の胴は、周囲へ広がろうとする力を輪のようにつながった壁で受けられます。一方、底が大きな平面だったら、中央付近は押し出されやすくなります。薄い板を片側から押すとたわむのと同じで、平らな面は内圧によって外側、つまり下へ膨らもうとするからです。底が膨らめば、ボトルはぐらつき、場合によっては材料の一部に力が集中します。
そこで底には曲面や溝がつけられます。曲がった面を連続させると、平面だけで受けるよりも力を周囲へ流しやすくなり、形も変わりにくくなります。段ボールに折り目をつけると曲げにくくなるように、同じ薄さでも形を変えることで剛性、つまり変形しにくさを高められます。
丈夫な丸い底を、そのままでは使えない
内圧に耐えることだけを考えるなら、球に近い形が有利です。圧力容器やガスボンベの端が丸いのも、力が一か所に偏りにくいからです。ペットボトルの底にも、中央を内側へ持ち上げたドーム状の曲面が使われています。
しかし、底全体を丸くすると机や棚に立ちません。丈夫さのための曲面と、自立するための接地点を同時に用意する必要があります。その答えが、炭酸用ボトルに多い「ペタロイド」と呼ばれる底です。petalは英語で花びらを意味し、底から見ると花のように見えることから名づけられました。
一般的なペタロイド底では、中央のドームから放射状に溝が伸び、その間に丸みを帯びた5本の足ができます。ドームと溝が内圧を受ける曲面をつくり、足の先端が机に接してボトルを支えます。デコボコは飾りではなく、「丸くして圧力に耐える」と「平らな場所に立つ」という相反する条件を両立させる形なのです。
5本という数そのものに万能の決まりがあるわけではなく、容量や材料の量、炭酸の強さ、製造ラインでの安定性に応じて細部は変わります。それでも、5本足のペタロイドは炭酸用ペットボトルを自立させる代表的な形として広く使われています。

厚くする代わりに、形で支える
圧力に耐えるだけなら、底の樹脂を厚くする方法もあります。ただし、それでは一本あたりの材料が増え、空の容器も重くなります。大量に製造し、箱に詰めて運ぶ飲料容器では、わずかな重量差も使う樹脂や輸送時の負担に積み重なります。
そこで容器設計では、必要な場所へ材料を配りながら、斜面、丸み、溝のつながりで強さを補います。ペタロイド底の足には、静止したときに立つだけでなく、充填工場の搬送装置を連続して通るときに倒れにくくする役目もあります。接地する部分の高さがそろっていなければ、一本だけ傾き、後ろを流れるボトルにも影響します。
底のデコボコは、強度、軽さ、自立性を同時に調整する設計です。形を少し変えるだけでも、力が集まりやすい場所や、樹脂の伸び方、接地面の広さが変わるため、設計段階では計算だけでなく、試作したボトルへの加圧や搬送の試験も行われます。
水やお茶のボトルは、別の力を考えている
水やお茶のボトルにも凹凸はありますが、炭酸用と同じ理由だけで説明することはできません。炭酸を含まない飲料は、通常、炭酸飲料ほど強い内圧を受けないため、底は中央をくぼませた凹型などにできます。少ない材料で立ちやすくし、輸送中や陳列中の荷重に耐えられるよう、胴のくびれや横溝と組み合わせて設計されます。
高温で飲料を詰めるボトルでは、さらに別の問題が起こります。密封後に中身が冷えると、内部の体積が小さくなり、今度は外側の空気に押される「負圧」が生じます。外へ膨らもうとする炭酸用とは反対に、内側へへこもうとする力です。そのため耐熱用ボトルは、熱に耐えるだけでなく、冷却後の負圧を受けても不規則につぶれない形にされます。
一見よく似た透明な容器でも、底を比べると役割の違いが表れます。花びら状の5本足なら炭酸の内圧を受ける耐圧用、比較的単純な凹型なら非炭酸用であることが多いのです。底は、ラベルに書かれていない充填方法の手がかりにもなっています。
デコボコは金型の中で生まれる
ペットボトルは、最初から大きなボトルの姿で作られるわけではありません。まずPET樹脂を溶かし、試験管に似た「プリフォーム」という原型を射出成形します。この段階で、飲み口のねじ山まで完成しています。
次にプリフォームをおよそ100℃まで温め、ボトルの形を彫った金型へ入れます。棒で縦方向に伸ばしながら高圧の空気を吹き込むと、柔らかくなった樹脂が風船のように広がり、金型の内側へ密着します。胴のくびれも、底の5本足も、このとき金型の形が写し取られてできます。冷やして固め、金型を開けば、軽くて薄いのに形を保てる容器になります。
底は深い溝や急な曲面が集まるため、樹脂をむらなく行き渡らせることが難しい部分です。薄すぎれば圧力に弱くなり、厚さが偏れば変形の原因になります。そのため、プリフォームの温め方、縦に伸ばすタイミング、空気を入れる圧力、金型の冷やし方まで調整されます。見慣れたデコボコは、形だけでなく成形条件まで含めて作られています。

中央の小さな点は、二つの工程の名残
底の中心をよく見ると、小さな点や突起が残っているボトルがあります。これは、底を強くするために後から付けた部品ではありません。プリフォームを射出成形するとき、溶けたPET樹脂が金型へ入った「ゲート」と呼ばれる入口の跡です。
その跡は、プリフォームがボトルへ膨らんだあとも底の中央付近に残ります。周囲の花びら状の形は吹き込み成形用の金型で生まれ、中心の小さな点は、その前に行われたプリフォーム成形の痕跡です。一本のペットボトルの底には、圧力への対策と、二段階のものづくりの履歴が重なっています。
参考資料
本記事の内容を確認する際に、以下の資料を参考にしました。
・PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルの種類」
https://www.petbottle-rec.gr.jp/more/kind.html
炭酸飲料用ボトルの内圧、5本足のペタロイド形状、耐熱用ボトルの特徴を確認しました。
・PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルのできるまで」
https://www.petbottle-rec.gr.jp/basic/made.html
プリフォームの加熱、金型、延伸、高圧空気による成形工程を確認しました。
・PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルQ&A・基礎知識」
https://www.petbottle-rec.gr.jp/qanda/sec1.html
内容物によってPETボトルの底部や形状が異なることを確認しました。
参照日:2026年9月13日


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