スーパーの飲料売り場には、色鮮やかな文字や写真で飾られたペットボトルが並んでいます。ところが、ラベルをはがすと現れるのは、ほとんど何も描かれていない透明な容器です。紙箱や缶には直接印刷できるのに、なぜペットボトルはわざわざ別のラベルを巻くのでしょうか。
答えは、使用後のボトルをきれいな再生原料へ戻しやすくするためです。一般的なPETボトルの再商品化設備には、本体に付いた印刷インキだけを取り除く工程がありません。印刷を外せるラベルにまとめておけば、回収後に情報や色を本体から切り離せます。
再生される主役は、無色透明な本体
回収されたペットボトルは、異物を除かれ、細かく砕かれ、洗浄されます。こうしてできる小片が「フレーク」です。さらに粒状のペレットなどへ加工され、新しいボトルや繊維、シートの材料になります。
このとき大切なのが、本体のPETをできるだけ均一で清潔な状態に保つことです。透明なPETの中へ別の色や素材が混ざると、再生品の色や品質に影響します。もしボトル全面の絵柄を本体へ直接印刷すれば、粉砕した一片一片にインキが付いたまま残りかねません。洗えば簡単に消える、というものではないのです。
PETボトルリサイクル推進協議会の自主設計ガイドラインでも、ボトル本体へ直接印刷を行わないことが定められています。目立つデザインが本体にないのは、見た目を簡素にするためではなく、次の製品の材料として使いやすくする設計なのです。
ラベルが、印刷をボトルの外へ持ち出す
ラベルには、商品名、原材料、栄養成分、注意書き、バーコードなど、多くの情報が詰まっています。同時にラベルは、それらの印刷をPET本体へ触れさせずに載せる「外せる印刷面」でもあります。
家庭でラベルをはがして分別すれば、回収の入口で本体と印刷物を分けられます。設備に入った後も、比重、風、洗浄などを利用して異なる素材を選り分けられるよう、ラベルにははがしやすさや分離しやすい材質が求められます。さらに、ラベルのインキがPET側へ移らないことも重要です。
ここで意外なのは、ラベルが単なる広告ではないことです。ボトルを彩りながら、使い終えたら印刷ごと離れていく。その取り外せる構造そのものが、リサイクルを支えています。

必要な情報は、刻印や小さな印字で残す
では、本体には一切文字を置けないのでしょうか。実際には、賞味期限、製造所固有記号、ロット番号など、製造や品質管理に必要な小さな表示は例外として認められています。ラベルのない商品でも、リサイクルへの負担を抑えるため、印字の大きさや文字数を小さくする目安が示されています。
一方、PETの識別表示は、ボトルの底などに浮き出た形で見つかることがあります。これはインキで描くのではなく、金型で形を付ける刻印です。素材そのものの凹凸なら、インキという別の物質を加えずに目印を残せます。

大きな絵柄は外せるラベルへ、追跡に必要な情報は最小限の印字へ、素材の目印は刻印へ。情報の役割ごとに置き場所を分けることで、便利さと再利用のしやすさを両立しています。
次にラベルをはがしたときは、何も描かれていない透明な本体を見てみてください。その「何もない」状態こそ、印刷を外へ持ち出し、PETをもう一度使うために考えられた形なのです。
印刷だけでなく、ボトルの底の形にも理由があります。炭酸用ペットボトルの底がデコボコしている仕組みも、あわせてご覧ください。
参考資料:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルQ&A Section1 PETボトルの基礎知識」/全国清涼飲料連合会「ラベルレス飲料に関するガイドライン」


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