カッターナイフの刃はなぜ折る?一本の刃に並んだ「次の切っ先」

折ると切れる? 文房具
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厚紙を何度か切ると、カッターナイフは同じ力でも切れにくくなります。ところが替刃を丸ごと交換せず、先端を一目盛り分だけ折ると、また軽く切れるようになります。長い刃の大部分は残っているのに、先端の小片をなくすだけで切れ味が戻るのはどうしてなのでしょう。

折る刃式の刃には、同じ形の区画を並べるように斜めの折線が入っています。使い終えた区画を折り取ると、その直後に控えていた区画の角が新しい切っ先になります。あの長い刃は、単なる一枚の刃ではなく、これから使う切っ先を順番に保存した列なのです。

切れ味の変化は、先端に集まる

紙へ最初に触れ、切れ目の入口をつくるのは、刃のいちばん前にある小さな角です。そこから下側の鋭い縁が切れ目へ入り、カッターを引く動きに合わせて紙の繊維を分けていきます。

使い続けると、先端の角やその近くの縁は少しずつ丸くなったり、目に見えないほど小さく欠けたりします。すると紙へ入り込むために余計な力が必要になり、引っ掛かりやすくなります。切れ味が落ちたときに問題になっているのは、長い刃全体というより、繰り返し材料へ触れた最前部です。

刃を折る操作は、この鈍った部分を研ぎ直しているのではありません。使った先端を切り離し、まだ材料へ触れていない部分を先頭へ出す操作です。

折線は、折れる場所を先に決めている

硬い鋼の板を、狙った位置で毎回同じように折るには、境目が必要です。折る刃式の刃に並ぶ斜めの筋が「折線」です。最初の製品を作る過程では、折線の間隔と深さ、焼き入れ後の硬さ、刃を研ぐ精度まで繰り返し検討されました。

刃を曲げると、折線のない平らな場所より、溝のある境目へ曲がりが集中しやすくなります。そこで一つの区画だけを分離できます。折線が浅すぎれば狙った場所で折りにくく、深すぎれば使用中の力にも耐えにくくなるため、位置だけでなく深さも刃の働きの一部です。

斜めの境目が、次の切っ先をつくる

折線は、刃の長さに対して直角ではなく、先端とほぼ同じ向きに傾いています。先頭の区画を外すと、その折線だった斜めの辺が新しい前面になり、下側の研がれた縁と交わる角が、次の切っ先として現れます。

もし境目が刃の幅に対してまっすぐ横切っていれば、折ったあとの先端は平らになり、紙へ最初に入る細い角を作れません。斜めの折線は、折る位置を示すだけでなく、折った直後の刃を再び「先の尖った形」に整える仕事まで受け持っています。

使い終えた区画を外すと、折線の直後にある角が新しい切っ先になる関係を示す

目で追うと、一本の刃の中に同じ向きの斜線が続き、その一つ一つの下端が次の切っ先候補として並んでいることが分かります。現在の切っ先のすぐ後ろに、次の切っ先が形のまま待っているわけです。

「刃を替える」を小さく分けた発想

折る刃式カッターナイフが考案された1956年、印刷所では紙を切るためにカミソリ刃が使われ、切れ味が落ちると刃全体を捨てる無駄がありました。考案者の岡田良男は、切れ味が落ちたガラス片を割って新しい角を出す使い方と、板チョコの折り筋を組み合わせ、一本の刃から新しい先端を何度も取り出す形を考えました。

現在の社名「オルファ」も、この仕組みそのものから生まれました。「折る刃(おるは)」をローマ字で「OLHA」と表し、Hを発音しない国があることを考慮して、HをFへ変えたのが「OLFA」です。1967年にブランド名として登場し、1984年に社名もオルファ株式会社へ変更されました。

「折る刃(おるは)」→「OLHA」→「OLFA」の変化

ただし、折線があるからこそ、刃を長く出しすぎると意図せず折れる危険も生まれます。メーカーが使用時に出す長さの目安を折線一本分としているのは、本体のホルダーで刃を支えながら、必要な先端だけを使うためです。切れにくくなった刃は不用意に触れず、製品に合った刃折器などで処理する必要があります。

先端を一つ折るたび、刃そのものが鋭くなり直すのではありません。長い一枚の中に保存されていた次の角が、順番を一つ進めて先頭に出ます。折線は、使い終えた刃先を捨てる境目であると同時に、新しい刃先を取り出す境目でもあります。

参考資料:オルファ株式会社「折る刃式カッターナイフの誕生秘話」/オルファ株式会社「カッターナイフの正しい使い方」

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